【映画】“幸せ”になる方法を知っているから/『ズートピア』
パパとママが幸せなのはなぜだかわかるか?
それは夢を諦めたからだ。
メモしてないのでうろ覚えですが、警察官になることを夢見る幼き日の主人公に父親がかけた言葉です。動物が人間のように暮らすこの世界でも「差別」があり、ウサギのような弱い草食動物が警察官になったという前例がありません。ウサギは人参を育てながら“ウサギらしく”暮らしてゆくことが幸せなんだと、主人公の周りの大人のウサギたちは言います。
しかし主人公ジュディ・ホップスは諦めませんでした。警察学校の同期たちはジュディの何倍も大きな肉食動物。身体能力の差はあきらかです。それでも努力に努力を重ね、ジュディは首席で警察学校を卒業します。
それなのに、配属先でジュディに与えられた任務は違法駐車の取り締まりでした。優秀な成績で卒業したのに、ここでもジュディは差別されるのでした。
ものすごーく簡単に言ってしまえば、「諦めなければ夢はかなう!」という映画です。
前述したように警察官としては恵まれた境遇ではないジュディが、諦めず困難に立ち向かい問題を解決し皆に認められました、ハッピーエンド!ストーリーは単純なんですが、わかりやすくテンポもよく、心地よく観ることができました。さすがディズニー。とはいえ、これもディズニーっぽさではあるんですが、ど直球で大人の心にも響かせてくるんですよね。20歳前後だと変にすれてて「こんなの子供だましだ!」なんて思っちゃうかもしれないんですが、そういう時期も過ぎ、こういうきれいごとのようなお話に励まされることもあるんだなあと感じています。
舞台となっている大都会のズートピアという街は、「誰でも、何にでもなれる場所」と謳われています。色んな種類の動物が尊重し合って生きている街。自由な街、理想の街。
「誰でも、何にでもなれる場所」。わたしたちの多くは(多くなかったらごめんなさい)、大人になるにつれてそんな場所がないこと、自分がなれるものに限界があることという現実と折り合いをつけていきます。なぜなら、それが“幸せ”になる方法だから。ジュディの父親が言ったように。でもきっとそんなこともなく、なりたいものを思い描き続け、その実現のための正しい方法を見極め努力していけば、きっと「何にでもなれる」のかもしれません。それでもわたしたち(また“たち”と書いてしまった)は夢を諦める。いろんな理由で。そして、夢を追う人たちが出会う多大な困難に立ち向かう必要がない日々を、“幸せ”と呼ぶようになる。
わたしは必ずしも夢を追い続けることが大切だとはまったく思っていません。けれど、きっとこういうお話にぐっとくる大人が少なからずいるのは、折り合いをつけたはずの夢をどこかでひきずっているからなんだと思います。しつこいですが、それを悪いこととは思いません。ただ、恐らくわたしたちは、夢とは完全に決別することは難しく、どんな形であれ長い間付き合っていかなくてはならないんだろうなあと思いました。
楽しく観られる映画です。
上戸彩の声がとてもいい!ジュディかわいい!映像がきれい!日本語版の歌もいい!
【作品情報】
『ズートピア』(原題 Zootopia)
監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
製作国:アメリカ
公開:2016年