ベーグルに憧れている

書きたいときに書きたいことを

【本】『握る男』

以前にいい感じだったけれど結局はご縁がなかった男性に恋人ができたことを人づてに聞き、自分でも思った以上にダメージを受けている夜です。なんというか、自分の心って意外と自分でもわかっていないんだなあと思いました。ここまでショックを受けるとは思わなかった。こんな日もある。生きてればこんな日もあります。

 

読みました。前フリとは全然関係ないです。

握る男 (角川文庫)

握る男 (角川文庫)

 

お寿司を握る職人の話でしょ、とそんなに期待していなかったのですが、想像していた話とは全然違いました。寿司職人の話ではあるんですが、「握る」のは寿司だけじゃない。うまいタイトルです。

 

仕事でもなんでもいいんだけど、高みを目指すことの終着点ってどこなんだろう。どういう状況になれば満足するんだろう。具体的な目標や到達点を掲げているのならばわかりやすいんですが、とりあえず上へ上へとのぼっていきたいという願望はどうしたら満たされるのでしょうか。

 

ひたすら成り上がってゆく「握る男」の妻の言葉です。

あの人は成り上がっていく過程を楽しみたくて走っているのか、成り上がった結果を楽しみに走っているのか、走ること自体が楽しいだけなのか、本当にわからなくなってきた。

これって、たぶん自分でもわかっていないことが多いんじゃないかな。何を目指して何のために走るのか、もしくは走ること自体が目的なのか。わからないけれど、とにかく走り続けなければならない。もう止まれない。そういうことってあると思います。その先にあるのが必ずしも幸せな未来だとは限らないけれど。

 

この「握る男」の足元にもおよばないですが、わたしも上昇志向が強い方だと思います。実力がまったく伴っていないので上昇志向というよりただ変なプライドが高いだけといえばそうですが。でも、「もっともっと」と追い求める先に何があるんだろうと思ってしまうことがあります。それを考えると怖くなる。わたしが探しているものがほんとうにそこにあるのか、そもそもそれは一体なんなのか。ふとした瞬間に、そう思ってしまいます。きっと暇なんでしょうね、そんなこと考えられるくらいに。

 

 

少しずれますが、「握る男」のこの言葉も印象的でした。

カネさん、もう一度言っときますけど、目的に辿り着くためには何をどうやったっていいんす。何をどうやろうが相手の上に立ってしまえば、こっちのものなんすからね。だって上に立たなきゃ何もはじまらないじゃないですか。目的への近道はそれっきゃないんすよ。

そうだなって。

 

お仕事小説として楽しく読めました。